英オライオン CT12が戦列に加わる

ブログ更新を半年も放置してしまいました。どうも機材をいじりだすとある程度結果が出るまで集中してしまい、同時進行で記事を書けない性分のようです。

さて、また機材の話になってしまいますが、当初は春のSkyWatcherセールでBKP300という元々異常に安いニュートン鏡筒がさらに値引きされていまして、ポチリヌス病が再発してしまったのがきっかけです。この鏡筒はすでにディスコンになっていますので最後のセールだったのでしょう。ただしF5でスチール製でしたから長くて重いです。ざっと図面を引いてもホームポジションでスライディングルーフ天井に衝突するのは確実です。なのでセール対象外ですがQuattro 300PというF4の鏡筒を載せようと決めました。もう買う気まんまんで代理店に納期とか問い合わせたのですが、ここでちょっと驚きの...

鏡筒と主鏡が別梱包でメーカー直送される!

という事実を知ってしまい悩むことに。
海外の運送業者は荷扱いが荒いというのは知っていましたので、接着されている斜鏡と違い、主鏡は圧迫に極めて弱いため軽く固定されているので30cm級では外れて破損してしまわないようにという配慮のようです。
完成品として組み立てられ検査されたかどうか不明なものを(いや多分検査しているのでしょうが)直送されても困るよなぁなどと考えたわけです。
そして重量です、Quattro 300Pはバンド込みで22.4kg、自分の体力では25kgを胸の高さまで上げるのが限界で、太い鏡筒ではちょっと取り落としそうで怖いというのが正直なところ。せっかく赤道儀を空けたのに振り出し? いやそれも悔しいですね。
そういえばカーボンのニュートン式もあったような、確か軽いはず、と調べてみたらありました。英オライオン(Orion Optics UK)という老舗メーカー。

このメーカーの特徴は
・20cm〜40cmのニュートン式鏡筒にいくつかシリーズがありカーボン鏡筒もある
・鏡面精度は一つ一つZygo干渉計で測定し、測定結果が添付される
・シリーズによって鏡面精度保証値が異なるが、概ね1/10λ程度と必要十分

当初の予算から少し(かなり?)外れてしまいますが、それほど非常識な価格ではないと思われるCT12を選択しました。とりあえず国内代理店のジズコさんに問い合わせたところ、CT12も海外輸送は鏡筒と主鏡が別梱包ですが、国内輸送なら主鏡を取り付けた状態で届けることが可能とのこと。また、主鏡取り付け、仮の光軸合わせ、国内輸送でのトラブル保証はジズコさんが負ってくださるという提案をいただけたので、前言を翻してCT12に決定したのでした。

OOUKの鏡筒による作例は国内では少ないと思いましたので海外の投稿サイトAstrobinで一応検索しましたが、光学製品はメーカーによっては品質にばらつきがあり、画像処理でどうとでもなるのであまり当てにはならないと個人的には思っていますので参考程度です。

スペックは以下の通り。

CT12
口径300mm F4 焦点距離1,200mm
主鏡 放物面鏡: 波面誤差値1/10PV以内保証、Hiluxコーティング 斜鏡短径 75mm* オフセット取り付け
接眼部 デュアルスピードフォーカサー
鏡筒サイズ・重量 鏡筒外径約350mm 、鏡筒長 約1,100mm、鏡筒重量 約17Kg
(切削バンド装着時は+2kg)

鏡筒バンドは上等なものが標準付属してますがアリガタレールは別売です。
私の場合は連装用のアルミプレートに鏡筒バンドをねじ止めしますので必要ありませんでした。

ニュートン式ですからコマコレクターは必須です。
定評があって入手しやすいのはこれらのようです。

Baader 2" MPCC
Sky-Watcher F4コマコレクター(GSO社のOEMと思われます)
Tele Vue 2" パラコア

パラコアは接眼レンズの視野絞り位置に合わせてバックフォーカスを調整できるようになっていますが、私は写真撮影専用で良いので価格的に手頃感のあるSky-Watcher F4コマコレクターにしました。EDレンズ含む4枚玉でAstrobinでも使用している人が多いようです。
今は画像処理でコマ収差を補正できてしまうので、それが前提ならあえて高級な物でなくても構わないと思います。
スカイウォッチャー コマコレクター(F4)

 

そんな経緯を経て2023-05-12に発注し、納品されたのは2023-10-17と予想以上に時間がかかりました。たしかジズコさんのサイトでは3~4か月と記載されていたかと。

まず開封状態です。またしても巨大な箱。

 

添付されていた鏡面精度測定結果です。

波長632.8nmのレーザーでPV64.77nmの波面誤差ということでほぼほぼ1/10λと言えそうです。(PVはPeak to Valley、設計値からの誤差の山から谷までという意味です)
穴が空いているように見えますが斜鏡の影になるので測定対象外であり、実際に穴が空いてはいませんw

 

光軸はというと、めちゃくちゃではないですね、少し安心。レーザーコリメーターだけでは参考にしかなりませんが、おいおい追い込んでいくとしましょう。

 

赤道儀に載せてみます、天井に付きそうですね。

鏡筒バンドのネジ穴に合わせてアルミプレートにボール盤で穴あけし、キャップスクリューで固定しました。
カウンターウェイトはわかる人はわかりますが搭載重量オーバーですw

 

反対側から見るとこんな感じ。黒い背景みたいですね、圧迫感がすごい。

同架の場合は同じ対象を同時に撮ることが多いですが、プレートの穴あけやアリガタの精度は元々良くないため500mmくらいでも写野が結構ズレてしまいます。
そのためFSQの下にAltAzプレートとか呼ばれる上下左右を微調整できる機構を挟んでいます。

 

これがそれなのですが、メーカーとか一切不明です、ヤフオクで入手しました。
上面は見たことのないねじ穴配置で既製のアリガタは付かないため、35mm間隔のねじ穴に変換するアルミプレートを自作しました。

 

中に入ると全体が写らないので外からも1枚。入ってくんな!と言わんばかりの威圧感w

 

 

さて、ここでトラブルを白状します。

 

接眼部が何故に2つ?

下が元のクレイフォード式接眼部です。右側に並んでいるのが鏡筒に接するベース金具です。

 

接眼部の根元がテーパーになってまして、ベース金具の縁にある小さな穴の奥のイモねじ4本で固定されていました。で、ちょっとした手違いで鏡筒を滑り落としそうになり慌てて接眼部を掴んだら、ポロッと外れて接眼部だけコンクリートに落下!
やっちまった!

やっちまったことはしょうがない、鏡筒を落とさなかったのが不幸中の幸い、ましてや怪我もしていない、いやそもそもクレイフォード式は自分と相性が悪いので、これはラックピニオン式に交換せよという何かの啓示なのでは?と即座に理解w

そういうわけで海外サイトを徘徊し、双子のようなラックピニオン式接眼部を奇跡的に見つけてしまいました。よく見るとベースが違いますね、でも厚みとテーパーが入る穴径は同じなのです。つまりカーボン鏡筒に新たに穴を開けずに済んだわけです。災い転じて福となす、違う、転んでもタダ起きない、かなw

落としたクレイフォード式は摺動筒を押さえるベアリング支持棒が折れていてスムーズな出し入れができなくなっていました。修理を試みましたが微妙な摩擦で成り立つクレイフォードは元には戻りません。

 

この新しい接眼部も手動ですから、リモートで使うにはモーターが必要です。定番のZWO EAFを取り付けます。できればβ-SGRやPrimaluce Labのようなフランジ型フォカサーにしたかったのですが、この鏡筒にフィットしそうな物はなくて断念、イタリアにもメールで交渉したんですがベース金具は25cm用までとのこと。

取り付けは専用ブラケットは存在しないのでFSQ用ブラケットと3Dプリンタでよく使われているパーツを適当に組み合わせてサクッと出来上がり。
ブラケットのねじ穴が長穴ですのでベルトテンションも簡単に調節できます。

あとは赤道儀のバランスをとって準備完了です、簡単でしょ、ね。

 

ファーストライトは何度も挑戦しては敗退している馬頭星雲にしました。
光軸調整を厳密に行う前ですが、斜鏡は少しいじりました。

アルニタクの眩しさでゴーストが発生したり、なにかとうまくいかない対象ですが、今回はなんとか画像処理できるものが撮影できたと思います。
よく見ると光条の先が割れていたり、ハロが均一になっていないなど確認ポイントがありそうですね。これらは主鏡マスクや斜鏡マスクで改善(ごまかし)できそうな気がしてます。


いかがでしたでしょうか、感想やアドバイスなどいただけたら嬉しいです。